【怪談】ご主人がガレージミラーを増やす理由
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僕は保険のセールスマンをしている。この仕事をはじめて1年ほど。
仕事内容は飛び込みの営業をすること。一般のお宅を訪ねて回って保険の商品を紹介している。

そして今月からある町へと配属されることが決まった。
一通り町の様子を車で見て回り、僕はさっそくある地域に目をつけた。
坂道の多い山の斜面を利用してつくられた住宅街。
山の上の方へと続く主要道路を中心に、碁盤の目のように道が左右へと整備され、

その道沿いにたくさんの家が並んでいる。
家の雰囲気からみると、築30~40年ほど前に作られた住宅街だろうか。
古めの建物が多く、セミの鳴き声は響くが静かな場所だ。

さっそく手前側にある住宅から順番にインターホンを押していく。
ピンポーン・・・ピンポーン・・・
「どなた様ですか?」家主にインターホン越しに声をかけられる。
「今、お時間よろしいですか?」と声をかける。
しかし「営業とか勧誘ですか?うちはそういうの断ってるんで」

こんなやり取りを繰り返す。
不在であったり断られたりで、とうとう道の突き当りの家の前までたどり着いた。

道の奥、森に近いためか薄暗い。
その家の前まで行くと玄関前に人影が見えた。
「こんにちわー!」
そこでは、庭の植木に水をやっていたのだろう女性が立っていた。
「あら、どなた?」
60代後半ぐらいの女性、この家の奥さんだろう。
僕はチャンスとばかりに話しかけた。

「いやー、今日は暑いですね。このあたりは坂が多いのでフラフラになりますよ。」
「お仕事で周られてるのかしら?こんな日差しの強い日に大変ね。」
インターホン越しではなく直接会えるのはラッキーな事だ。
世間話から入って、相手と親密になることができれば契約に繋がる可能性が高い。
そして専業主婦の高齢女性は、話し相手になってくれることも多い。

僕の予想は的中し、しばらく立ち話をすることに成功した。
「あなた疲れてるでしょ?よかったらお茶でも飲んでいきなさい。」
と玄関に入れてくれ、お茶を出してくれた。

この日は契約など商品の話はせず、配布ノルマを理由にパンフレットを手渡すだけで、

その家を後にすることにした。
当面は、お客さんとの距離を縮めることが大切だ。後日顔を出すことも伝えた。
奥さんにお礼を言って、玄関を出ると丁度この家のガレージに車が入るところだった。

少し年期の入ったグレーのセダン。きっとこの家の旦那さんが帰宅したのだろう。
できれば一言挨拶がしたいと思い、運転席に目をやるとやはり高齢の男性が乗っていた。
しかしなぜか僕をにらみつけて機嫌が悪そうな顔をしている。
きっと不審な営業マンだと警戒されているのだろう。

文句を言われては困るので、むりやり営業スマイルをつくって会釈をして、足早にその場を後にした。

「奥さんは人当たりがいいのに、旦那は頑固でお硬いタイプかぁ・・」

こういう亭主関白の家は慎重に営業をかけないと、旦那の一声で契約を破棄される場合もある。

あれやこれやと今後のプランを考えながら、僕は住宅街を歩く。
そしてふと気づく。「あの家、あのガレージ。ちっちゃいミラーがいっぱいついてたなぁ。」
奥さんと顔を合わせたときには気が付かなかったが、
さっき旦那さんの車を目で追っているときに視界に入ってきた。
いわゆるガレージミラーというやつだろう。

車庫まわりによく設置される小さめの鏡。そのガレージミラー。20枚以上は付いていただろうか。
思い出すと気味が悪いが、きっとあの旦那さんのことだ。変わり者なんだろうと思うことにした。

そしてそれから数週間経ち、僕はあの家に4度目の訪問をしていた。

商品の売り込みを急ぐことなく、根気よく雑談をしに通っていた成果がみられ、
そのころには奥さんともかなり打ち解けていた。
奥さんはそうとう僕を気に入ってくれたのか、契約はトントン拍子に進んだ。

「ごめんなさいね。いつも私の話し相手になってくれてるのに。こんな少額の契約だけで。なんか悪いわね。」
「いえいえ!契約してくださるだけで、とてもありがたいです!」

しかし僕には気になることがあった。
何度もここに通っているのだが、あの旦那さんにはあれから一度も会っていなかったのだ。

「そういえば、旦那さん家にいませんよね。お仕事に行かれてるんですか?」
「あぁ・・・。主人のことですか。もう定年なので仕事はしてないんですが。フラフラしてまして。」

奥さんの顔色が変わった。どうも旦那さんの話はしたくないようだ。

「そうなんですか。そういえば~」と急いで話題を変えた。

今回の保険契約では、奥さん名義のものだった。
そのため無理に旦那さんの事にふれる必要はなかったのだ。

そして、契約書に印鑑をもらったところで、今日はおいとますることにした。

「本当にありがとうございました!また保険証書などお持ちします。」
「いつも丁寧にありがとうね。暇してるからまたいらしてね。」

僕はきちんとお辞儀をしてから、その家の玄関を後にした。

すると、前方からこちらに向かってくる人影が。
車で帰宅した旦那さんが玄関へむかうところに居合わせてしまったのだ。
旦那さんはあいかわらず厳しい表情。僕の方は見ず、うつむきながら早足で歩いてくる。

突然のことで、僕は思わず声をだすことを忘れてしまったのだが、とにかく頭だけは下げた。
するとすれ違いざま、旦那さんがなにかブツブツとつぶやいているのが聞こえた。

「轢いてやった。轢いてやった。轢いてやった。轢いてやった。轢いてやった。轢いてやった。轢いてやった・・・・」

僕の存在を無視しているのか、気づいていないのか玄関の中へと消えていった。
「あの人、もしかして車で何か轢いたのか?」と思い車の方に目をやる。

しかし車に目立った外傷はなく、そんな様子はみうけられない。
それでも、あの異常な旦那さんを目の当たりにして、恐怖を感じた僕はとにかくその場から離れた。

早足に住宅街を歩いていると
「あんた、どうしたの?顔色が悪いじゃない」
僕に声をかけたのは、近所に住んでいるという老婆だった。

腰を曲げて押し車を押している。散歩か、買い物にでも行ってきた帰りだろうか。
きっと僕があまりに青い顔をしているので声をかけてくれたんだろう。

「ああ、・・・・は、はい。大丈夫です。」
先程のことで動揺していたため、僕はしっかりした挨拶も返せなかった。

「あんた、最近ここらでよく見るね!なんかの営業だろ?噂になってるよ。」
「え?噂ですか?すいません。仕事で回っているので。
無理な勧誘などはしていないつもりなんですが・・」

「いやいや、あんたそこの突き当りの家に出入りしてるだろう。
あの家に近づくなんて物好きだねぇ、気をつけなよ?」

老婆の話を聞くに、僕が出入りしているお宅はこの住宅街でも評判が悪いとのこと。
そんな家に度々通う営業マンの存在が、近所の噂になっていたのだ。

「奥さんはまともだが、あそこの旦那はおかしいんだ。」と老婆は言った。
「旦那さん、どんな風におかしいんですが?」

こんな噂好きの老婆の話に食いつくなんて、愚かなことだとはわかっていた。
だが先程、目の前で見てしまったあきらかに異常な様子の旦那さん。
好奇心が勝ってしまった。

老婆が得意げに話はじめた。
「数年前だったかな。あそこの家のガレージに野良猫が住みついた。
でも、あそこの旦那は動物嫌いでな。猫を見る度に蹴飛ばすように追い払った。

でも、なぜだか野良猫はあの家のガレージに姿を見せた。

その日、旦那は車に乗って出かけようとしたらしい。

するとそこにフラッと猫が現れたらしい。短気な旦那はそのままアクセルを踏んだんだと。
きっと猫を脅かしてやるつもりだったんだろ。でも猫は轢かれて命を落としてしまった。

それからだよ、あそこの旦那がおかしくなったのは。」
「・・・・どうなったんですか?」

僕は生唾を飲み込んだ。

「居もしない猫を見るようになったんだ。
ガレージで車に乗っていると猫の鳴き声を聞くらしい。バチが当たったんだろうね。
ガレージミラーをあんなにつけて。本人にしか見えやしないのに。」
「そんなことがあったんですか・・・」
「それから旦那さん人付き合いもしなくなって、近所では変人扱いだよ。
あんたも若いんだから深入りしんさんなよ。」
「お、お話ありがとうございます。」

一通り話せて満足したのか、老婆は押し車を押しながら小道へと消えていった。

あの旦那さん毎日“いるはずのない猫”を轢いているのだろうか。

ふと、来た道を振り返りあの家の方に目をやる。

すっかり夕方でセミの声も遠くに聞こえる。

ガレージには沢山のミラー。オレンジ色の日の光を不気味に反射している。
そして・・・・家の横、道路に誰か立っている。

その人物は小刻みに左右に頭を振っていた。
影のようになっており、表情はよく見えない。

その人物に恐怖を感じた僕は、全力で走った。
背後からは「ははははははは」と笑い声が聞こえた。
それはまぎれもなく奥さんの声だった。

もうここには来れないと思った。

あれから同僚に仕事を引き継いでもらい、僕はあの住宅街のある地域の担当をハズしてもらった。
だからあの家のその後は知らない。
今でもたまに、ガレージミラーのある家を見ると“あの家の事”を思い出してしまう。

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