<祖母からの電話>

俺は少々複雑な事情があり、両親とは縁切り状態だった。

まぁ、でっかい夢を追って、真面目な両親に勘当されたと

いうところまでは話してもいいかな。

だから俺の方から両親と縁を切りたかったわけではなかったんだけど、

まぁ両親の気持ちも分からないでもないし、

俺は俺でそれなりの覚悟を決めて業界に飛び込んだから、そこに後悔は無かった。

 

両親との関係を絶つと、他の親戚との関係も絶たれるようで、

俺が個人的に連絡を取るような親戚がいなくて、

大体両親を通してしか会ったりしていなかったからなんだけど、

とにかく両親と縁切りしてから、俺は天涯孤独の身となった。

 

夢を追って、それなりに業界でも食っていけるようにはなってきた頃、

知らない電話番号から電話がかかってきた事があった。

仕事上そういう事はよくあるから、基本的に鳴った電話は全部取るようにしてるんだけど、

その日もいつものように電話に出てみたら、電話口の女性が俺のばあちゃんを名乗ったんだ。

 

俺の名前もちゃんと言えるし、自分の名前もちゃんと名乗り、

何よりも声のかんじからして、間違いなくばあちゃんだった。

「どうしたの、突然」

そう聞くと、ばあちゃんは

「いやね、お父さんとお母さんから無理やり連絡先を聞き出したんだよ。

今までだってずっと気になってたんだけど、

頑なに連絡先を教えてくれないもんだからさ。私の孫は元気にしてるのか、

ちゃんと食っていけてるのか、気になって気になってしかたなかったんだよ」

と話し始めた。

 

聞くところによると、大腸がんを患って入院していたらしく、

それで俺の両親に「もう老い先短いんだから、

最期ぐらい望みを叶えてくれたって良いだろう」と懇願して、俺の連絡先を聞き出したらしい。

 

俺の方から縁を切ったわけではないから、

連絡先は変えていなかったのが幸いだった。

それにしても、大腸がんとは・・・と心配したが、

ばあちゃんは元気そうな声で話し続けていた。

 

他愛もない会話を繰り返し、そろそろ切るかというところで、

ばあちゃんが変な事を言い出した。

 

「そういえば、あんた、良くない何かに付きまとわれているようだから、気をつけなさい。

何かあったら無理やりにでもお父さんかお母さんに連絡して、私のところへ来るんだよ」

 

俺は、何の事か分からず、聞き返そうとしたが、そこで電話は切れてしまった。

 

ばあちゃんの最後の言葉が耳に残った。

 

それから数日後、事件は起こった。

俺は夜道で襲われた。何者かよく分からない人物5,6人に取り囲まれて散々な目にあった。

幸い命に別状は無かったものの、全身骨折と打撲で大怪我を負った。

 

ばあちゃんの電話の数日後だったからか、あの最後の言葉が気になり、

俺は両親に連絡してみる事にした。家電の番号は変わっていなかったので、父親が出た。

俺の声を聞くなり切ろうとしたので、

慌てて「ばあちゃんから電話かかってきたんだけど!」と言うと、

一瞬電話の向こうが静まり返った。

 

「なんだって?」

父の不機嫌そうな声が響く。

 

「だから、3日ぐらい前かな、ばあちゃんから電話があったんだよ。それで・・・」

 

「おばあちゃんは、もう2年前に亡くなってる」

 

「・・・え・・・?」

 

衝撃の展開だった。

死因を聞いたら大腸がんだと言う。

 

では、俺に電話をかけてきた女性は一体誰だったのか、

ばあちゃんだったのか、はたまた別の誰かか・・・

 

父親からは「冗談は寝て言え」と言われ電話を切られてしまったので、

結局ばあちゃんの墓参りすらできずにいるが、

「私のところへ来るんだよ」という言葉が今でも忘れられない。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事