<他人の不幸は蜜の味>

事故物件は安い。

でも、事故物件は場合によってはヤバイから気を付けた方が良い。

一応不動産の名誉のために言っておくと、そんなに問題無い事故物件もあるにはある。

事情があって事故物件になってしまったものの、

そこにいる霊はそんなに悪い奴じゃないってパターンだ。

もう成仏済みのところもあるし、住んでるうちに成仏してくれるところもあるし、

たまに存在感をアピールしてくる場合も、何か悪い事をするわけじゃない、

という場合は、風評被害が気にならなければ住んでも大丈夫かもしれない。

ただし、厄介な霊とか怨念とかが巣食っている事故物件もあるから、要注意だ。

 

俺が住んだのは、まさにそういう事故物件だった。

 

音楽を生業にしたかった俺は、バイトをしながら生活費を稼いで食いつなぎ、いつか成功してやるという希望に満ち溢れて音楽に明け暮れる日々だった。

家賃は可能な限り抑えたくて、それで済み始めたのが事故物件だった。

 

そこは自ら命を絶った人が住んでいたというアパートだった。

詳しい理由は聞かされなかったけれど、俺は「あ、そういうの、気にしないんで」とだけ言って格安の家賃でその家に住む事になった。

 

俺自身には霊感は全く無いから、変な声がするとか、見てはいけないものを見てしまったとか、そういうのは無かったんだけど、アパートに住み始めてからどうも体調が芳しくない日が増えたんだ。

 

それまで体力だけは自信があったのに、風邪をひいたのが始まりだった。

何年かぶりに高熱を出して寝込んで、死ぬかと思ったけれどどうにか治った。

 

その時は気にも留めなかった。でも、熱を出したせいで高額バイトの面接に行けなかったんだ。

 

それから1ヶ月ぐらい経って、大事なオーディションの前日に盲腸になった。

これは本当にヤバイと思った。事故物件の事なんて頭から抜け落ちてたから、まさかそのせいとは思わなかったけれど、なんでこんな時に・・・と悔しかった。

 

そしてその3ヶ月後に、今度は俺に彼女ができたんだが、その彼女が付き合ってすぐに事故に巻き込まれて入院沙汰の大けがを負った。

 

なんだか、俺が幸せを掴もうとしたそばから、ことごとくそれが潰されてないか・・・?

うっすらとそんな事に気付いたのが、このタイミング。

 

彼女は回復したものの、怪我が治ってから我が家に遊びに来た時に「なんかこの部屋・・・」と呟いた。彼女にも霊感があるわけではなかったが、何か感じるものがあったらしい。

そして部屋に来た翌日、彼女は謎の腹痛と頭痛と嘔吐、そして下痢に襲われた。

 

俺は正直に彼女に事故物件の話をした。

すると彼女は近所の噂好きそうなおばさんから

事故物件に入った人たちの末路を聞き出したんだ。

 

おばさんの話によると体調不良とか怪我とかが相次いで、

家を出ていく人が絶えないとの事だ。俺はその話を聞いて、

初めて事故物件の恐ろしさを感じた。

 

噂らしいので本当かどうか知らないけれど、

俺が住んだ部屋で自ら命を絶った人は、身体が弱く病気と闘いながら働いていたものの、

欠勤が続きクビになってしまったという。

それが辛く、自分の身体の弱さと社会の冷たさを恨んでこの世から去っていったのだそうだ。

 

そういうわけで、部屋の入居者が幸せになっていくのが許せないんじゃないか、

というのが俺の彼女の見解だった。

 

「出られるんじゃ出るに越したことはない」という事で、俺はその部屋を出る事にした。

他の格安物件に越してからは、体調不良の波は止まり、

彼女の方も平穏無事な生活が続いている。

 

あの体調不良や事故が偶然だったのか何なのか分からないが、

何かに呪われてるんじゃ・・・?と本能的にそう直感したから、

やはりそういう事だったのかもしれない・・・

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