やるな、と言われるとやってみたくなり、

行くな、と言われると言ってみたくなる・・・

 

人間の性っていうのは愚かなもんだな、と思うけど、私が体験した怪談というか、母がおかしくなってしまった話はリアルにトラウマになってて、それ以来「行くな」とか「やるな」系の禁止ルールには好奇心がどんなにあっても逆らえなくなった。

 

小学生の頃だったんだけど、当時は家でゲームとかじゃなくて、外遊びが基本だった。

男女関係なく学校から帰ってきたら友達たちと近所の公園とか神社とか雑木林とか行って、かくれんぼしたり、鬼ごっこしたり、色々やって遊んでた。

 

親たちも比較的寛容で「あんまり遠くへいかないように」とか「大人無しで川には近づくな」とか、そのくらいの約束を守っていればどこへ行ってもOKだった。

「川に近づくな」とかは、ちゃんと理由も説明してくれて、子どもの川遊びの事故の話とかも学校でも聞かされてたから、子どもながらに納得して言いつけは守ってた。

 

でも1つだけ、子ども心にどうしても気になっている「ある場所」があったんだ。

それは雑木林の中にある祠みたいなやつ。神社でもないのに、なんだか物々しい雰囲気を放っていて、遠目で見た時にめちゃくちゃ気になって「あれ何?近くで見たい!連れてって!」と親にせがんだ。

 

すると母が鬼の形相で「絶対に近づいちゃダメ!」と言ってきた。

そのあまりの剣幕にビビッたものの「えー、なんで?」と食い下がってみた。

しかし、母は理由を教えてくれる事なく「ダメったらダメ。いい?とにかくあの場所だけには絶対に言っちゃダメだからね」と念を押した。

 

ダメと言われると、行きたくなるのが子どもの好奇心。

しかも川などとは違い、行ってはならない理由が全然分からない。

 

一体何があるのか、なぜ母は行っちゃダメと言うのか、知りたい事が多すぎで、私は気になって仕方なくなってしまった。

 

そして、ある日、友達何人かと遊んでいると、ふとあの祠が頭に浮かんだ。

私は友達に「ねぇ、知ってる?」と雑木林の祠の事を話した。

「お母さんは絶対近づいちゃダメって言うんだけどさ、理由も教えてくれなくてさ、だったら自分たちの目で確かめてみたくない?」そう誘って、何人かで連れ立って祠を観に行く事にした。

 

軽い肝試しのようなスリル感を味わってドキドキと高揚していた。

 

雑木林の中にひっそりと佇む祠。

その姿を捉えて、近づいていく。

ワクワクした気分でどんどん歩を進めていったが、近づけば近づくほど、なんだか禍々しいものを感じた。肌が泡立つような感覚だった。そして息が上がっていくような、そんな感覚に襲われ、冷や汗というよりも脂汗が滲み出てきた。

 

「ねぇ・・・」

友達のひとりが口を開いた。

 

「なんか、私、ここ、やだ。戻ろう」

 

その言葉に誰も反論しなかった。

私たちは無言だった。

 

もうちょっと近づけば祠の目の前まで辿り着けたのだが、不穏な空気が私たちの来訪を完全に拒絶していた。

 

「う・・・うん・・・そうだね・・・」

 

首謀者である私がそう言うと、皆一斉に踵を返して一目散に雑木林から逃げ出た。

そしてそのまま家まで猛ダッシュで帰った。

 

帰宅した私を見て、母は開口一番「あれほど行くなって言ったのに・・・!」と言い放った。

その顔は真っ青だった。なぜバレたのか分からなかった。

母にすぐに分かってしまった事も恐怖だった。

 

私は大泣きしてひたすら謝り続けた。

母は、しかしいつも私が大泣きすると抱きしめてくれる母ではなかった。

 

忌むような目つきで私を睨み、塩を掴んで私めがけて撒いてきた。

そして、問答無用で神社へ連れていかれ祈祷してもらった。

 

そこまでしてようやくいつもの母に戻り

「ホントにバカだね、あんたは」と抱きしめてくれた。

怖がらせないために理由は言わなかったそうだが、後から聞いたら、

あの雑木林はその昔、少女連続誘拐事件が起きた現場だったそうで、

祠は犠牲になった子どもたちの霊を鎮魂するために建てられたのだそうだ。

 

今なお、さまよう彼女たちの魂が遊び相手を探しているという。

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